「おれい」と「おんれい」の正しい読み方について
「おれい」と「おんれい」を理解するための基本知識
まず最初に、いちばん大切な結論からお伝えします。
「御礼」は〈おれい〉と読むのが一般的で自然です。
かな表記の「お礼(おれい)」は見慣れていますが、漢字の「御礼」を見たときに「御中(おんちゅう)」と混ざってしまい、〈おんれい〉と読んでしまうことがあります。これは、語頭に付く「御(ご/お)」という接頭語が、語によって読み方を変えるために起こる混同です。「御中(おんちゅう)」「御社(おんしゃ)」のように音読みが残っている語もありますが、「御礼」は長く生活に根づいた言い回しとして〈おれい〉が広く定着しています。
言い換えると、「御礼」は「お」を添えることで語全体がやわらかくなり、受け手にも伝わりやすい形になります。特別に古典的な響きにする必要もなく、普段づかいの表現として安心して〈おれい〉と読みましょう。
「御礼」の語源と文化的背景
「礼」という漢字は、古くから「思いやり」「敬う気持ち」に関わる語として使われてきました。日本語では、人の心の動きをていねいに包むために、語の前に「お/ご」を添えることが多くあります。「御礼」という表記もそのひとつで、相手への敬意や距離感を心地よく示す役割を担っています。
また、手紙や挨拶の文化が発達する中で、「御礼」は贈り物やお心づかいをいただいたときに気持ちを言葉で伝えるための大切なキーワードになりました。現代でも、封筒の表書きや書面の見出し、メールの件名などで目にする機会が多く、穏やかで上品な印象を与えてくれます。
正しい読み方の定義と混乱の原因
混乱の多くは、「御」の読み分けに由来します。日本語の語彙には、「御中(おんちゅう)」「御社(おんしゃ)」のように音読みが残るものと、「御手紙(おてがみ)」「御礼(おれい)」のようにやわらかな読み(訓に近い形)が定着したものが共存しています。このため、「御+名詞」を見た瞬間に「おん…」と予測してしまい、〈おんれい〉と口に出しやすくなるのです。
実務や日常で違和感なく伝わる読みは〈おれい〉です。相手の耳に自然に届き、文章としても読みやすくなります。迷ったときは、「御礼=おれい」と短く覚えておくと安心です。
「おれい」と「おんれい」の使い分け
場面に応じた使い方の違い
実際の場面では、読みだけでなく、どのように言い回すかも大切です。名刺交換や面談後、連絡をいただいたときなど、シーンごとに使い方を少し調整すると、文章にやわらかな気遣いが生まれます。
- 対面でのお礼:「先ほどは本当にありがとうございました。お礼を申し上げます。」
- 文面でのお礼:「本日はお時間を頂戴し、御礼申し上げます。」
- 件名での簡潔な表現:「面談の御礼」「ご紹介の御礼」
耳なじみや読みやすさを考えると、話し言葉ではひらがなの「お礼」、書き言葉や件名・表書きでは「御礼」を選ぶと、まとまりのある印象になります。
敬意を表す使い方とカジュアルな使い方
相手との距離感に合わせて語調を整えましょう。目上の方や初対面の方には、「御礼申し上げます」「厚くお礼申し上げます」のようなやわらかい丁寧表現が便利です。親しい方には、「ありがとうございました」「とても助かりました」など、気持ちがまっすぐ伝わる言い回しが心地よく響きます。
相手が読みやすく、気持ちを受け取りやすい文章を選ぶことが、いちばんの心配りになります。
例文で学ぶ正しい使い方
- 件名:打ち合わせの御礼
本文:本日はお時間をいただき、御礼申し上げます。頂戴したご提案を拝見し、次の段取りをご相談させてください。 - メッセージ:先日はあたたかいお言葉をありがとうございました。あらためてお礼をお伝えしたく、連絡いたしました。
- 手紙の書き出し:このたびはご配慮を賜り、心より御礼申し上げます。ささやかではございますが、お気持ちばかりのお品をお届けいたします。
「御礼」を使うシーンやタイミング
ビジネスシーンでの御礼の重要性
ビジネスでは、相手の時間や心配りに対して、言葉で気持ちをきちんと残すことが重視されます。面談後のメール、資料をご提供いただいたあと、紹介を受けたときなど、節目ごとに御礼を添えると、やり取りがていねいに循環します。件名に「御礼」を置くと、受信箱でも用件がすぐ伝わり、本文も読み進めてもらいやすくなります。
また、書面や封筒の表書きに「御礼」と掲げると、改まった場面にも落ち着きが生まれます。相手の立場や状況を思い描きながら、一言添える姿勢が、信頼感につながります。
日常生活における御礼のマナー
日常のやり取りでも、ほんの一言が相手の心に長く残ります。ちょっとした手助けをいただいたとき、相談に乗ってもらったとき、メッセージやカードで「お礼の言葉」を届けるだけで関係があたたかくなります。堅苦しくする必要はありません。「助かりました」「うれしかったです」と、ご自身の気持ちを素直に添えるのがいちばんのポイントです。
お礼状を書く際の注意点
- 時期:できるだけ早く。気持ちが新しいうちに届くと伝わり方が違います。
- 分量:長すぎず、読みやすく。要点を先に、気持ちはていねいに。
- 呼びかけ:お名前や敬称を整え、相手に合わせて語調を選ぶ。
- 結び:「今後ともよろしくお願いいたします」など、次へつながる一言を。
「お礼」と「御礼」の違い
「お礼」の意味と使われる場面
ひらがなの「お礼」は、やわらかく親しみやすい表記です。会話やメッセージ、SNSのやり取りなど、距離が近い場面や日々のコミュニケーションで自然に使えます。文章全体の雰囲気も軽やかになり、読み手の負担を軽くしてくれます。
「御礼」の特別な意味と文脈
一方で「御礼」は、文面にきちんとした印象をもたらす表記です。メールの件名や案内状、表書きなど、改まった空気を作りたいときに向いています。読みは〈おれい〉で統一し、語感の落ち着きを大切にしましょう。
フレーズや表現方法の幅を広げる
「ありがとう」とは異なるお礼の言い方
- 御礼申し上げます:落ち着いた書面向け。
- 厚くお礼申し上げます:深い感謝をていねいに伝えるとき。
- このたびはありがとうございました:幅広い場面で使える定番。
- いつも支えてくださりありがとうございます:日頃のつながりへの気持ちを込めたいとき。
- お心づかいに感謝いたします:相手の思いやりを受け止めて伝える言い回し。
感謝を伝える他の表現技法
- クッション言葉:「恐れ入りますが」「お手数をおかけします」など、前置きでやわらかさを出す。
- 相手の行動を具体化:「ご都合を調整いただき」「丁寧にご案内くださり」など、相手の働きかけを言葉にする。
- 自分の気持ちを短く明確に:「うれしく感じています」「心強かったです」など、読みやすい一文で。
まとめと今後の参考
正しい読み方を生活に活かす方法
「御礼」は〈おれい〉。このシンプルな軸だけ覚えておけば、件名にも本文にも迷いが少なくなります。ひらがなの「お礼」と漢字の「御礼」を、場面に合わせて選び分けると、文章の雰囲気が整います。メールや手紙の最後に一言添えるだけでも、相手の心にやさしく残ります。
関連書籍やリソースの紹介
- 現代の手紙文やメール文の実例集(書店で入手しやすい定番の手引き)
- 日本語の敬語や語感を学べる入門書(読みやすい解説と例文が豊富なもの)
- 言葉遣いの辞典・アクセント辞典(語の読みを確認したいときに便利)
- 公共機関が公開する言葉の資料(用例が整理されていて安心して参照できるもの)
読み方で迷ったときは、ここでのポイントに戻ってやさしく整えてみてください。あなたの言葉が、相手の一日をふんわり照らしますように。

